AIの時代への懐疑
組織でAI導入を推進していると、時折ぶつかる壁がある。それはAIそのものではなく、一緒に働く上司や同僚の「AIを嫌がる」という反応だ。AIへの過剰な期待も問題かもしれないが、同じくらい、過剰な不安や嫌悪感も障壁になる。私自身、これには何度も悩まされたことがある。
あるプロジェクトで、新しいAIツールを導入しようとしたときのこと。上司が「また新しいことを始めるのか」と半ば呆れたように言った。確かに、組織に新しいテクノロジーを持ち込むには労力がかかる。それは皆が承知の上でのことだ。しかし、そのひと言で現場のモチベーションがぐっと下がったのを感じた。AIが仕事を奪う危険性や、これまでのやり方が否定されるかもしれないという不安感がそこにあるのだろう。
私はそんなとき、全てを急いで説明しようとすることをやめた。説明や説得に時間をかけすぎると、かえって反発心を煽る結果にもなるからだ。代わりに、AI導入における失敗談を正直に話すことにした。実際に、何度も試行錯誤し、時には「このツールは使えないじゃん」というフィードバックをもらって、尻込みしたこともある。そんな私の失敗や迷いを共有することで、少しずつ壁が崩れていくのを感じた。
小さなステップの積み重ね
説得や説明よりも効果的だったのは、小さいステップから始めるというアプローチだった。私の経験上、はじめにごく小さな作業、それも臨床に近い状態で、「ちょっと試してみる」ことが恐れや不安を薄めるきっかけになった。まずは、手作業の簡素化やデータ整理など、すぐに効果が見える部分から始めたのだ。
すぐにはうまくいかず、何度もやり直すこともある。でも、実際に目に見える形で結果が出ると、一歩ずつプロジェクトが進んでいく。そのプロセスを経て、徐々にAIへの理解が深まり、次第に拒否感も少なくなっていく。何よりも、私自身がAIに過度の期待をしないこと。それによりかえって、AIが私たちの仕事を補完する存在であることを強調できた気がする。
AIを使って仕事を効率化することが目的であって、必ずしも誰かを説得することではない。時には立ち止まって、現場の声を聞く耳を持つことだって重要だ。だからこそ、私は「AI嫌い」の人たちとも、対話を欠かさず続けていこうと思う。
道半ばの旅で、同じゴールを目指すことが必ずしも最良のアプローチではないのかもしれない。分岐点が現れたとき、また違う視点で眺められるように、くすぶる火を消さずにいきたい。